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母は東京・柳橋で料亭を営んでいて、私が幼稚園の頃からは店の真向かいにあった家で介護中の祖母と叔父、叔母たちと暮らしていました。当時は花柳界が華やかな時代で、夕方になると隅田川沿いの料亭街を芸妓さんたちが行き交い、三味線の音色が聞こえてくるような粋な花街の風情がありました。
そんな中、何かある度「百万石とろうか」というのが母の決まり文句でした。当時の出前と言えば、ラーメンなど中華料理が一般的で洋食のとんかつは贅沢な食べ物。ただし私は食が細く、脂っぽい肉が苦手で……ところがここのひれかつは、それまでのかつとは別物。衣も肉もあっさりとしていて、初めて「美味しい!」と思ったんです。出前が待ち遠しかったですね。日本髪に白塗りの芸妓衆にも人気で、待合部屋で出前をとって、美味しそうにとんかつを頬ばる姿を微笑ましく思い出します。
今では柳橋界隈も様変わりしましたが、当時の面影と味を残すこちらに伺うと、子供の頃の懐かしい日々が甦ります。(取材・文/沖村かなみ)
「百万石」東京都台東区柳橋1-12-12/営業時間11:45~13:30、18:00~21:00L.O./定休日:土日祝
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