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ハウス食品の「バーモントカレー」と「うまかっちゃん」という2つのブランドの商品開発やブランド戦略について、「バーモントカレー」は食品事業一部ビジネスユニットマネージャーの萩原祐樹さんに、「うまかっちゃん」は食品事業二部チームマネージャーの桑原陽介さんに聞きました。
「バーモントカレー」は全国的に知られるカレールウの定番。カレールウ市場で約35%を占める一大ブランドです。一方で「うまかっちゃん」は、九州では抜群の認知度を誇る袋麺のブランド。主に九州で販売されているエリア限定商品です。「全国的なブランド」と「ある地域だけで抜群の認知度と販売量を誇るブランド」では、商品開発などの方針にはどのような違い、もしくは共通点があるのでしょうか?
ー大きなブランドを手がける難しさを教えてください。
萩原さん:「ハウス食品といえばバーモントカレー」というイメージを持たれているお客様が非常に多いため、バーモントカレーでお客様のイメージと違うチャレンジをしてしまうと、企業イメージにまで影響するリスクがあるので、新しいチャレンジをする際にはものすごく慎重に検討を進めています。
【「バーモントカレー」は1963年に誕生しました。当時、カレーは大人が食べるものだという認識が強く、実際に味もスパイシーな味が主流でした。子どもの「家族と同じようにカレーを食べたい」というリクエストに応えるため、バナナやはちみつを加えて食べやすくするなどの工夫が各家庭でされていました。そこで、「子どもが食べやすい味付けのカレールウを作ればもっと家庭に広がるのではないか?」と開発が始まりました。】
桑原さん:「うまかっちゃん」も少しそれに似ています。「うまかっちゃんってこういうものだ!」というイメージがお客様の中に定着しているので、従来の「黄色」と違い「青色」を基調としたパッケージの海鮮塩とんこつなど、違った路線のバリエーションを作りましたが、「ちょっと違う」と思われたのか、お客様の印象に残らなかったようでした。
【「うまかっちゃん」は1979年に誕生しました。1973年に出したしょうゆ味のインスタントラーメンが九州で売れないどころか製造していた福岡工場の従業員ですら食堂で食べないという事態が起きていました。(*当時の工場の食堂では、袋麺を自分たちで調理できる設備がありました。)福岡工場長や福岡支店から開発担当者に「至急、九州向けのインスタントラーメンを作って欲しい」と要請があり開発が始まりました。九州の人に受け入れる味を目指し、担当者が九州のラーメン屋を巡ったり、地元の主婦に試食してもらい、味も名前も地元志向の強い商品に完成。今年で発売40周年、なんと一度も味を変えていません。】
ー味やパッケージの改良に際して、どのようなポリシーがあるのかや、どんなことをしているのかを教えてください。
桑原さん:「うまかっちゃん」は発売初年度から好評をいただき九州の方に受け入れられた味を変えるべきではないだろうという認識のもと、一度も変えていません。
ー時代のニーズなどで味を変えたりしないのですか?
定番の「うまかっちゃん」以外の味を出してニーズに応えています。最近では、「赤辛」(うまかっちゃん史上最も辛い味)や「濃厚新味」を発売しています。健康志向に応える「鶏だしとんこつ」もあります。そのような展開ができるのも、「うまかっちゃんのスタンダードの味」という安心して戻って来れる場所があるからです。
ースタンダード以外の商品も一度出すと、味は変えないのですか?
スタンダード以外は変えています。同じ豚骨ラーメンでも九州は県によって味が違うので、「鹿児島 黒豚とんこつ」や「熊本 火の国流とんこつ」などは、地元で好まれるような味に近づけていくようにしています。お客様から「熊本らしくないよ」とか「ニンニク弱いよ」といった声をいただき、改良をしていきます。
ーバーモントカレーの改良について教えてください。
萩原さん:まず、パッケージに関してですが、「白ベースにしてみようか」とか「ロゴを右肩上がりから並行にしてみようか」と、チャレンジをしていた時期があったのですが、お客様から「いつも買っているバーモントカレーが見つからない」という問い合わせを多くいただきました。イメージが変わったことでお客様の目につかなくなり、店頭からなくなったのではないかと思われてしまったのです。
実は、「バーモントカレー」を認識してもらうためのパッケージにはいくつかポイントがあり、そのポイントを外さないようにしています。また、「ブランド」とは、我々の意思を込めるものではありますが、各お客様の頭の中に出来上がっているものでもあります。そのあたりを言語化した「ブランドガイド」というものを作成し、各商品のパッケージなどをリニューアルする時も、変えてはいけない部分や変えていっても良い部分を明示化しました。
バーモントカレーのパッケージでは、「黄色がベースで」「右上がりのロゴで」「甘口であればロゴの背景は赤色で」「りんごとハチミツのアイコンがあり」「カレーの写真がある」。これらの要素があれば、たとえレイアウトが変わろうともお客様は「バーモントカレー」だと認識していただけます。
ルウの配合も時代の流れに合わせ変えています。一番顕著なのは「色」です。洋食を家で作って食べることが珍しかった頃は、カレーの色は黄色かったのです。時を経てデミグラスソースなど洋食系の味が家庭に浸透してきて、見た目はブラウンがかっている方が味は濃厚でおいしそうだというお客様のイメージに合わせてソースの色を変えました。
味についても、ベースの味は変えていませんが野菜の甘みを強くしたり、塩味を少し抑えたりするなどで、ずっと食べ続けていただくために時代の流れに合わせ変えています。
お客様から「こうしてほしい」という声が上がってくる前に開発を始めます。「こうしてほしい」という声をいただいてからの開発だと遅いんです。調査をして技術開発をすると、それだけで2年くらいかかってしまい、時代に取り残されてしまいます。ブランド担当としては、これから何が起こりうるかを見て先に手を打ちます。それが飽きられずに、ずっと食べ続けていただくための秘訣ではないかと思います。
ー多くのお客様が納得する味や成分を作ることは難しいことではないですか?
萩原さん:バーモントカレーを変えるにあたっては、今までのお客様に○(まる)を出していただいて、なおかつ新たなお客様にも響く、というところを目指します。変えすぎてはいけませんが、少しずつ良くしていきたい、その塩梅に苦労します。
ーその辺りはどう見極めるのですか?
改良品を作ると既存商品と味を比較するために、お客様に食べていただく調査をしますが、改良品が勝ちすぎるといけないんですね。100人の声を聞いたとして、80人が改良品を支持したという結果ではダメなんです。引き分けから55人ぐらいが理想ですね。今までのお客様も改良品を既存商品と変わらず評価してくれて、新たなお客様もこれはおいしい、と思ってくれるように開発することがロングセラーブランドとしての悩ましいところです。
桑原さん:「うまかっちゃん」はスタンダードに関しては味を変えていませんが、他のバラエティに関して言うと、「うまかっちゃん」は、そもそも九州というエリア限定で販売している商品なので、九州のお客様がどう思うかが大事です。北海道や東京の方が美味しいと言っても、九州の方がそうではないと感じられたらダメです。九州各県の方に味に関するアンケートを取り調査します。ただ、調査できる人数が全国区の商品と違って少ないので、声を反映するか反映しないかの見極めが難しいです。
ー去年8月に出たうまかっちゃん「濃厚新味」の開発経緯や売れ行きを教えてください。
九州の若い人の嗜好などを踏まえました。麺はシリーズ共通で使用しているものではなく新たに開発しています。「細カタ麺」という、細くて茹でても硬さが残るような仕様にしました。短期的に見ると、シリーズの中でこれまで2位の売上だった「からし高菜」を抜いています。
ー最後に、商品が選ばれ続けるための考えや取り組みを教えてください。
萩原さん:「バーモントカレーブランド」として、アレルギーに配慮したものや、塩分量やカロリーを控えたもの、乳酸菌を加えたものなど、品ぞろえを拡充してきていますので、様々なお客様に喜んでいただける提案を続けていきます。
また、お客様との接点を絶やさないように工夫をしています。そのためにテレビCMを投下したり、幼児向けに「はじめてクッキング」というイベントなどを継続しています。
桑原さん:「うまかっちゃん」は、今年の9月に40周年を迎えます。地元九州の皆様にとって、「最愛のブランド」と思っていただけるような仕掛けを現在準備中です。
【略歴】
萩原祐樹(はぎわら・ゆうき)
2001年入社。札幌営業所、営業企画推進室を経て現職。バーモントカレーをはじめとするカレールウ製品全般の製品企画やプロモーション立案を手掛ける。
桑原陽介(くわばら・ようすけ)
2005年入社。福岡支店、東京支社東京営業部を経て現職。主に、「うまかっちゃん」「好きやねん」の製品企画やプロモーション立案を手掛ける。
※いずれも取材時
聞き手・平川透、写真・木本直行(日刊工業新聞)
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