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NEWSポスト 3/25(日) 7:00配信
食べ物の嗜好は地域性に左右されるもの。意外に見える取り合わせにも「理由」はある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が指摘する。
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全国の「食」の傾向を総務省の家計調査(総世帯)に照らして見ていくと、時代によって移り変わるものもあれば、それほど地域格差が変わらないものがある。例えば、食肉における豚や鶏への出費は増えているものの「西の牛、東の豚」や納豆における「東高西低」といった趨勢が変わらない食べ物もある。「食」は地域の風土や歴史に深く関わっている。
その傾向は「カップ麺」や「即席麺」といった、この数十年で出現した食べ物からも見て取れる。実は家計調査の項目のなかでも、この2項目は「温かい汁物」の嗜好を見るのに適している。麺のなかでも「乾うどん・そば」などは冷やして食べる地域も多い。「乾燥スープ」という項目もあるが、年によって上位の入れ替わりも多く、地域格差がそれほど顕著ではない。
そんななか「カップ麺」「即席麺」はなぜか「北」が圧倒的に強いのだ。今年のカップ麺への支出額のトップは5456円(即席麺1526円)の青森市。もはや首席が定位置とも言える存在で毎年のようにトップ、もしくはトップ争いに加わっている。
今年の上位は大接戦で2位は5301円(同1631円)の秋田市、3位5297円(同1429円)の新潟市となっているが、上位はカップ麺と即席麺の合計支出でも1~3位の序列は変わらない。
家計調査の他の項目で見ると、青森市民は「外食」にかける費用が年額平均8万6617円と、全国で唯一二桁を切っている。全国でもっとも外食費の多い川崎市の27万2902円のおよそ3分の1だ。
実は「外食」と「カップ麺」という項目には負の相関関係がうかがえる。カップ麺部門2位の秋田市の「外食」に充てる支出は10万4068円、3位の新潟市も10万3961円。「カップ麺」の支出における上位ベスト3は、「外食」に対しては支出の少ない“逆ベスト3”とも言える出費の控えようだ。
北国の冬は雪深く寒い。外食に出かけるより、カップラーメンなどの保存のきく温かい汁物が重宝される。
北国の食の特徴に「塩辛さ」がある。人間の体は塩分を摂取することで寒さに対して体温を維持できる仕組みになっているからだ。ただし、一方で多量の塩分の摂取習慣は高血圧につながると言われる。
ある調査では1950年代の青森は1日に28グラムという大量の塩分を摂取していたという。現代(2016年県民・健康栄養調査)ではその摂取量は10.5グラムと半分以下になったが、それでも全国的に見れば塩分摂取量は多い。
昭和の頃、青森には「あだりまき」という言葉があった。「あだり」とは急に意識を失って倒れること、「まき」とは血筋を指す。つまり「あだりまき」とは急に意識を失うような倒れ方をする血筋──高血圧は遺伝によるものだと考えられていたが、実のところ寒さが血管を収縮させて血圧を上昇させるなど、東北には塩分以外にも血圧が上がる要因はいくつもあったのだ。
寒冷な北国では塩分を摂取することで寒さに対抗してきた。冷蔵技術が発達する以前は、野菜を中心に収穫した食料を塩蔵して保存することは文字通り、生きる「糧」だった。食習慣や味覚は地域の気候や風土時間をかけてゆっくりと変化していく。寒い地域で、温かく塩気のある汁物が好まれるのには、やはり理由がある。そして北国にも春がやってくる。
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