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食品新聞 9/13(日) 9:02
急須でいれるお茶(リーフ)には、新鮮な香りやお茶をいれる作法などドリンクのお茶(緑茶飲料)にはない魅力がある。 この魅力を伝えるべく、伊藤園ではかねてから専門店での接客に加えて、対面でのお茶セミナーや大茶会といった数々のイベントを定期的に実施してきたが、コロナ禍でこれらの活動が全て休止へと追いやられてしまった。 しかしながら、オンラインの活用によって、これまでリーチしにくかった若年層などの新しい層にお茶の魅力を知らしめられる可能性が出てきた。 井上佳江マーケティング本部販売促進部第六課グループリーダーは、リアルで開催できない痛手は大きいとしつつも「セミナーの開催場所はこれまで地域の公民館が一番多かったが、オンラインの開催によって公民館に来られる方とは異なる世代の方も参加しやすくなった」と語る。 直近の新たな試みとしては8月13日に子ども向けオンラインセミナーを実施。「夏休み!OCHA自由研究2020」と題し、茶畑の説明や“お茶の歌”などを交えながら、お茶のいれ方をわかりやすく説明した。 「先着200人で募集をかけたところ、あっという間に定員に達した。子ども向けといったような何かに特化したやり方にも可能性を感じた」という。
ツイッターでの発信も強化している。 社内検定資格保有者である伊藤園ティーテイスターによる「#IeTimeOEN(家タイム応援)」プロジェクトを5月1日に開始し、日々様々な切り口でお茶の楽しみ方をツイッターで発信している。 その内容は、ティーテイスター1級保有者の井上リーダーも「私の知らなかった楽しみ方がたくさん紹介されている」と唸るほど。 お茶の魅力を広めるにあたって、その要となるのがお茶の伝道師であるティーテイスターの存在で「3級以上の資格保持者をまずは全社員半数の割合に高めたい」と意欲をのぞかせるのは岩田孝浩能力開発部長。 現在、伊藤園の社員数は5403人。このうち資格保有者は20年5月時点の累計で1級17人、2級363人、3級1909人の計2289人。毎年10月に試験が行われ、試験内容は学科(筆記)・検茶・口述となる。
合格率は3級・2級ともに1割程度の狭き門で、1級はさらに難易度が高く、1級受験資格(準1級)を得るための試験を突破後、1年間の研修期間を経て受験する。1級は13年に新設され、毎年数人が受験するものの合格者ゼロの年もある。 まず準1級の試験が難しく、準1級になってからの1年間の研修期間に、茶畑研修・日本紅茶協会のティーアドバイザーの資格取得・裏千家の「初級」の許状取得――の3つが受験への条件となる。
1級試験で特に難しいとされるのが検茶で、複数の日本茶葉の産地や特徴を全て言い当てなければ不合格となる。 試験2週間前に、複数の日本茶葉が配られトレーニングの機会を与えられるものの「毎日練習するのだが、やればやるほど分からなくなる難しさがある。また、光の加減で、茶葉の色がいつもと違ってみえるだけで困惑してしまう。3回目の受験でやっと合格した」と井上リーダーは振り返る。
検茶を突破すると最終試験の口述に進み、ここでも「1級としてどんな思いを持って取り組んでいくかをしっかり語らないと合格とはならない」(岩田部長)という。 試験官は、調達部門のエキスパートやマーケティング本部長が務めている。 3級→2級→(準1級)→1級の順に進み、3級は実務経験を経た入社2年目から受験可能となる。 能力開発部の役割は、ティーテイスター育成に向けて勉強の場の提供や仕組みづくりにある。 近年は新入社員研修などを通じて資格取得のチャレンジを促進。「資格を持つ若手社員が増えていけば、古参社員にもよい影響を与える」との狙いもある。 その手応えとしては、昨年、3級合格者が増加したことが挙げられる。 「筆記試験には、お茶の歴史・分類・品種・栽培から製造などを盛り込んだ『茶の本』で勉強する必要があるのだが、昨年は3級合格者が増え、勉強する裾野が明らかに広がってきている」との見方を示す。
コロナ禍を受け、3級受験に関しては今後オンライン化を検討。全国の社員がより公平に受験できる仕組みも整える。 社内資格のティーテイスター制度は1994年に運営開始し、2017年に「伊藤園ティーテイスター社内検定」として厚生労働省に認定された。 運営開始の背景には、お茶(リーフ)への関心が薄まっていることにあったという。 「売上高が1000億円程になると総合飲料メーカーのイメージが強くなり、社内でもお茶の知識を持っている人が少なくなってきているという危機感が生まれた。同時に、お茶屋としてお茶の文化を次世代や国内外に伝え、広めたい想いがあった」と説明する。 伊藤園では年に2回、ティーテイスター資格保有者に対して、無資格者などに対する教育と同時に自らがお茶の知識を振り返る勉強の場を設けている。「能力開発部でインプットの場を設け、販売促進部でアウトプットしてもらう。お茶に関する知識を有する社員が増え、活動の場が広がれば、お客様の潜在的なニーズを把握できる。」とみている。 販売促進部では、基本をベースに日々変化するニーズを受けて発信の仕方を工夫。「売場や商談の場でどのようにいかしていくかを考えるのが販売促進部」(井上リーダー)だという。 井上リーダーは制度開始1年前の93年に入社。「入社時は店舗で販売していて、お客様にお茶の魅力を伝えきれていないことが物凄くもどかしかった。そうした中で制度ができて、まさにこれだと思った。お茶について自信を持ってお伝えしたいという気持ちがあり、資格があればお客様も私のことを信頼して耳を傾けてもらえると思った」と振り返る。 井上リーダーが今懸念するのは、お茶農家が高齢などを理由に生産を止め、荒茶生産量が減少していることにあり「農家さんがお茶を生産してくれないとお客様に提供するお茶もなくなってしまう。日本のお茶文化が廃れないようにするためにも啓発活動に取り組んでいきたい」と危機感をつのらせる。 岩田部長も「伊藤園では本業を通じて社会課題の解決に取り組んでいる。社会的な貢献がないと事業は継続できない。場当たり的な取り組みではなく、文化として長期的に構築していくことが必要。急須でいれたお茶を複数のお茶碗にわけて注ぐ、その精神はCSRにつながっている」と述べる。
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