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激辛ブームが日本で起きて久しいが、近年はこれまでとは違う“辛さ”が流行している。唐辛子、ハバネロを5倍、10倍と辛くするといったものではなく、舌がヒリヒリとシビれるような本場・中華料理の独特の辛さ「マー(麻)」が人気なのだ。今、日本で巻き起こっている空前の“マー活”ブームの実態に迫る。
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マー活人気がさらに広がっている。四川料理によく使われる香辛料の「花椒(ホワジャオ)」は舌がヒリヒリとシビれる辛さが特徴だが、これを中国語では「マー(麻)」と表現する。
この味に魅了され花椒を持ち歩いたり、自ら栽培したりすることを、今では「マー活」と呼ぶようだ。
こうした時流の中、ここ近年は各大手コンビニから四川風の中華まんなどが発売された。今年になってからも期間限定メニューとして、松屋には「四川風麻婆鍋膳」、びっくりドンキーは「麻辣バーグライス」、モスバーガーは「麻辣モスバーガー」といったラインナップが追加された。どれも花椒がたっぷりと入った本格的な味だ。
なぜ、これほどにマー活は息の長いブームとなっているのか。
四川料理の魅力と食文化を伝えるWebサイト「おいしい四川」を運営する中川正道氏は、ブームの背景をこう説明する。
「食べるラー油、パクチーの流行を経て、辛くて香りの強いものを好む人が増えました。そして彼らはさらなる刺激を求め、2016年から麻婆豆腐ブームが起こりました。これまでの日本人の舌に合わせたマイルドな麻婆豆腐ではなく、舌がピリリとする本場の麻婆豆腐です。激辛の麻婆ラーメンの『蒙古タンメン』ブームもこの流れからだと思います。麻婆豆腐が入口となって、火鍋、担々麺、麻辣湯と他の四川料理や激辛グルメまでブームが広がっていったのです」
ここまでくると、もはやマー活という言葉では、今回のブームを一括りにすることはできない。なぜなら、四川料理の辛さは、マー(花椒)だけでは作り出せないからだ。
日本で最も人気の高い四川料理・麻婆豆腐の辛さは、中国では「マー(麻)」と「ラー(辣)」を合わせた「マーラー(麻辣)」で表現される。マーは花椒、ラーは唐辛子の辛さだが、この2種類の辛さが混ざり合ってこそ、麻婆豆腐をはじめ四川料理の特徴的な辛さは生まれるという。
「日本では『辛い』のひと言ですが、中国には辛さだけでも何種類もある。四川料理を象徴する辛味はマーラーです。花椒、トウバンジャン、唐辛子などを合わせて作られます。花椒だけでは完成しません。マーだけではなく、四川料理の代表的な辛味であるマーラーの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいです」
日本にない味覚で、舌がシビれる辛さの「マー」ばかりが、これまではクローズアップされてきた。だが、ブームの対象が広がる今、「マー活」は「マーラー(麻辣)活動」の略称と考えたほうが良さそうだ。
4月20日と21日には、中川氏が主催する「四川フェス2019」が新宿中央公園で開催される。
四川フェスでは、マーラーの味を軸に本場の四川料理を日本に広めるため、日本の若手料理人から四川省や重慶を代表する指折りの料理人までが年に1度東京に集結し、料理の腕を振るう。過去2回の開催で累計10万人も来場している“ビッグイベント”だ。
「(イベント開始当初から比べると、年々、参加者は)若い人が増えています。辛いものを食べたいというだけでなく、ツイッターやインスタに投稿したいという目的もあるみたいですね。真っ赤な料理の写真をSNSにあげると、反響は大きいみたいです。四川料理は見た目にも味にもインパクトがあり、これが多くの人に受け入れられる理由です」
この激辛ブームは一過性に終わらずに、日本の新しい味として定着していくに違いない。すでにブームの中心のマーラーの波は各家庭の食卓にまで押し寄せている。実際、最近は本格的なマーラーの合わせ調味料も登場し、人気を博しているというのだ。
「味の素や丸美屋が販売する麻婆豆腐の素も売れ行きが好調のようです。特に、豆板醤がふんだんに入って花椒も別袋で付いている商品が、売上の上位に入っています。この傾向はしばらく続くのではないでしょうか。需要を先読みした商社が現地で必死に花椒を買い占めているなんて話も聞きますからね」
今年2月にはエスビー食品から家庭用の「四川花椒パウダー」が販売されている。定番の香辛料を長年発売してきた大手食品会社もマー活市場に参入。食卓の七味、コショー、バジルなどの横に花椒が並ぶ日もそう遠くないかもしれない。
取材・文/村田孔明(清談社)
週刊新潮WEB取材班
2019年4月17日 掲載
新潮社
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