NEWSPOST 7/31(金) 16:05
本誌・女性セブン連載『トラとミケ』(ねこまき・作)の単行本第2巻が紀伊國屋書店全店コミックエッセイ部門で第1位(7月第2週)になるなど、話題沸騰。早くも重版も決まった。名古屋にあるどて屋『トラとミケ』を舞台に描かれるほっこりストーリーを、ブログ「マンガ食堂」管理人の梅本ゆうこさんはどう読んだのか。トラとミケで出される「どて飯」の再現レシピとともにお送りします。
* * * しっかり者のトラとのんびり屋のミケ。名古屋弁のネコのおばあちゃん姉妹が営む「どて屋」は、夜ごと呑兵衛が集う赤味噌の香り漂う飲み処。淡い水彩で描かれる個性豊かで人間くさいネコたちのやりとりは、懐かしく温かく、心がキュッとなります。
美味しそうな食べ物もたくさん登場するのが本作の魅力。私が一番心を鷲掴みにされたのは、お店の名物のどて煮をご飯にかけた「どて飯」。
牛すじやモツを赤味噌でじっくり煮込んだトロトロのどて煮、そのソースがしみ込んだご飯、サービスの温玉…。一コマだけで「絶対美味しいやつ」と確信する魅惑の食べ物ですが、これは実在する名古屋の名物料理。
ねこまきさんの手にかかると、名古屋B級グルメも絵本のメルヘンな食べ物に見えてしまうから不思議です。名古屋のどて煮は豚もつと牛すじのミックスが定番、最低2日は煮込むべし…など、トラさんとミケさんが作る味に近づきたくて調べるうちに、頭が赤味噌一色になってきました。さて、作り方は次のとおり。
〈材料〉 ・牛すじ 300g ・豚もつ 300g ・八丁味噌 100g ・だし 600~700cc ・調味料 酒 大さじ5 ざらめ 大さじ4 みりん 大さじ1 しょうゆ 大さじ1 ・しょうが 1かけ ・刻みねぎ 適量 ・温泉卵 人数分
〈作り方〉 【1】牛すじと豚もつを水から火にかけて茹でこぼし、ざるにあける。 【2】鍋に【1】を入れ、だしと調味料、薄切りにしたしょうがを入れて火にかける。煮立ったらアクをとり、フタをして弱火で3時間ほど煮込む。2日目、3日目も弱火にかけて煮込む。 【3】鍋の汁気が減ってとろみのあるカレーのような状態になり、肉がトロトロになればOK。どて煮をご飯の上によそい、温泉卵、刻みねぎを散らす。好みで一味をかける。
トラさんとミケさんのお店のどて煮は、お父ちゃんから受け継ぎ、注ぎ足されてきた50年モノの秘伝の味噌だれが特徴。さすがに3日煮込んだだけでその味に近づけたとは思いませんが、こっくりと甘い赤味噌で煮込まれたコラーゲンたっぷりのどて煮は、まるで和風ビーフシチューのような濃厚さ。しかも味噌だけに、ビーフシチューの10倍ご飯に合うんです。
『トラとミケ』には、このほかにも時間をかけて美味しくする料理がたくさん出てきます。
鮮やかな紅しょうが、家庭ごとの流儀がある白菜の漬物、お正月の黒豆。2巻では夏の梅酢サワー、手間暇かかるマロングラッセ、こたつで仕込む甘酒…ああ、よだれが止まらない。
「時短」「お手軽」といった流行りの言葉からはほど遠い、スローな食卓の風景。でもやっぱり料理も人(ネコ)も、長い時間を経ないと出ない味わいがあるのです。名古屋に行く機会があったら、トラさんとミケさんのようなかわいいおばあちゃんのお店で食べられるどて煮を探してしまいそう。
【profile】 うめもと・ゆうこさん/1979年生まれ。漫画に出てくる美味しそうな料理を再現し、ブログにレシピを載せている。著書に『マンガ食堂』。
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2020/07/31
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